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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1388号 判決 1958年8月30日

控訴人(原告) 坪谷嘉太郎

被控訴人(被告) 新潟県知事

原審 新潟地方昭和二九年(行)第二〇号(例集八巻四号77参照)

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人が昭和二十九年二月十一日になした宗教法人元海寺の規則を認証する旨の決定の無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」旨の判決を求め、被控訴指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、認否は、控訴代理人において「(一)利害関係人が、旧元海寺の存続を欲するかどうかは、原審のように一般論によつて事を決すべきではなく、具体的にたしかめるべきである。(二)利害関係人が具体的に旧元海寺の存続を欲しない場合は、これを解散すべきものであることは宗教法人法附則第十七項、第十八項の規定からも明らかであり、その存続を欲しない利害関係人が新宗教法人との関係に入ることを拒否するかどうかは旧元海寺の存続とは別箇の問題である。(三)旧元海寺が、その存続について規則の認証を申請し又新潟県知事がその認証決定をした事実をもとにして、利害関係人一般の具体的意思は旧元海寺の存続を欲していたと推論することは妥当でない。右具体的意思は同法第十二条第二項の公告をした後でなければこれをたしかめられないのである。」と述べた外は第一審判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

被控訴人が昭和二十九年二月十一日、訴外旧宗教法人元海寺より昭和二十七年八月三日附を以て認証申請のあつた宗教法人元海寺の規則を、宗教法人法附則第五項、同法第十四条の規定に従い、認証する旨の決定をしたことは、当事者間に争がない。ところで控訴人の本訴請求は、要するに、被控訴人の右認証決定には違法の点があり、無効のものであるから、控訴人は旧宗教法人元海寺の信徒総代及び利害関係人として、右認証決定が無効であることの確認を求めるというにあるから、先づ控訴人が斯る訴を提起するについて当事者適格を有するか否かについて検討する。宗教法人法は寺院規則の認証をすることができない旨の決定(通知)を受けた者が再審査請求、訴願等をなし得ることを規定しているのに、寺院規則が認証された場合については不服申立について何等規定するところがない。従つて控訴人が訴外元海寺の寺院規則に対して与えた認証が無効であることの確認を請求し得るか否かは民事訴訟法の一般理論によつて考える外はない。

ところで同法においてはかような訴の正当な当事者は右認証が無効であることを確定することに法律上の利害関係を有すべきものと解せられるのであるが、控訴人が旧元海寺の信徒総代であり又旧元海寺に対してその主張のような特殊の関係があつたとしても、それだけでは右認証無効を確定することに法律上の利害関係があるものとは認められない。そうだとすれば控訴人は本訴について当事者適格を缺くものであり、本訴は不適法として却下すべきものである。

原判決は、その理由中において前叙と多少趣を異にする説示をしているけれども、本訴を不適法とする結論においては右と軌を一にするものであるから結局正当であり本件控訴はその理由がない。

よつて民事訴訟法第三百八十四条、第八十九条及び第九十五条の各規定を適用して主文のとおり判決した。

(裁判官 梶村敏樹 岡崎隆 堀田繁勝)

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